「遅いですね…」
エンジェルルームでウォルコットはフォルテの帰りを待っていた。
フォルテは半日ほど前に任務にでていき、連絡もいっさいなかった。
プシュー
ドアの開く音にウォルコットは慌てて振り向いた。
「フォルテさん…心配し…!?」
彼女は右半身、血まみれの状態であった。
そのままフラフラと歩きどかっ、とソファーに座り込んだ。
「フォルテさん!だ、大丈夫なんですか!?すぐに医務室に行ったほうが…」
ウォルコットは必死だった。しかし、そんなウォルコットとは対照的にフォルテはずいぶんとさめていた。
「大丈夫…全部敵の返り血だから。ロストテクノロジーの争奪戦で、ね。」
「そ、そうですか、でもそれなら早く着替えたほうがいいですよ。」
フォルテは力なくため息をつき
「…中佐、あたしは、あと何人殺せばいいのかなぁ。もう…疲れたよ。」
高い天井を見上げ、力なく、搾り出したような声でつぶやいた。その眼に涙を溜めながら。
「フォルテさん…」
するとフォルテはウォルコットに自分の全体重をかけてよりかかった。
「フォ、フォルテさん!」
「中佐…中佐ぁ…!」
フォルテは震えた声でウォルコットの胸に泣きついた。
ウォルコットは困りつつもよりかかってきたフォルテの肩を抱き寄せた。
最初は彼女のうなじからシャンプーか、香水の香りか、が漂ってきた。
しかしすぐに彼女を無残なものにしている、誰の物かもわからない血のにおいがして、
むせ返りそうになった。
だが…その血の臭い、彼女の涙、彼女の全てがウォルコットの中に哀愁、愛情
といった感情を作り出していった。
「あのですね…」
優しくフォルテの髪をなでながらいった。
「中佐…?」
「その…今晩私の部屋にきてくれませんか?このままあなたをほっておくわけには…」
ウォルコットの言葉にフォルテは嬉しそうに微笑んだ。
「うん…じゃあ、着替えてくるから、部屋にもどってて」