クロミエ×ミント

(これから、どうなるんだろう)
(あたし、絶対母さんの仇とるから)
(あぁ、休み欲しいー)
 今日もいつもと変わらない昼下がり。エンジェル隊のパイロットミント・ブラマンシュはいつものように儀礼間エルシオールの廊下を歩いていた。
(家に帰りたい、みんなどうしてるかな)
(ミントさんて見かけ子供だよなー)
(くそっ、あいつ絶対許さねぇ!)
 ミントは耳をふさいだ、
そんなことをしても意味はないとわかってはいた、
ただそうせずには居られなかった。
「・・・やっぱり・・・疲れますわ・・・」
 ため息混じりにそう漏らした。彼女にはテレパシー
という他人の思考を読み取る能力があった。
 それゆえ人間の裏の顔、薄汚れた部分もはっきりと見えてしまうのだ。
 もともと繊細な性質なため、表にこそ出してはいないが、日々の仕事と相まって
精神的にもかなり疲れていた。
ミントは自分にしか聞こえない雑音から逃げるようにクジラルームへと入っていった。
「ここは落ち着きますわね・・・」
 そっと目をつぶり肩の力を抜いた。
 聞こえてくるのは波の音と草木のすれる音だけ。
 人工の風でさえこの上なく心地よく、
部屋の中ででは味わえない開放感がそこにはあった。
 クジラルームは本来誰でも出入り自由なのだが、
皆日々の多忙に追われて、非番の時間はもっぱら自部屋で睡眠に徹していた。
なのでクジラルームにはほとんど人は来ず、
たまにタクトが顔を出す程度だった。
「ミントさん」
 いきなりの声かけに一瞬躊躇したが、
声の主がクロミエだと分かるとすぐさまいつもの笑顔を作った。
「あら、クロミエさん、お邪魔してますわ」
「いえ、いいんですよ。クジラルームにはあんまり人が来ませんから。
来ていただいてうれしいですよ」
 クロミエはミントより一つ年下の15歳。
年齢の割りに人格がしっかりしているので
タクトもたまに相談にきているようだ。
「ここはいいところですわ、本当に。
この戦いでの心配ごとも一時は忘れさせてくれますもの」
「・・・そうですか・・それはよかった、
僕もここの管理をしている甲斐がありますよ。
でも・・・僕はミントさんの方が心配ですけどね」
「・・なんのことですの?」
 ミントはクロミエの予期せぬ発言に少々面食らった感じだったが、
またすぐいつもの顔を作って言葉を返した。
『これよりドライブアウトします。
エンジェル隊は至急格納庫へ移動してください』
言葉を返した刹那、アナウンスがなった。
ミントは今のクロミエの言葉が何を意味しているのかが気になったが、
今はそんなことを考えている場合じゃない。
一言クロミエに別れを告げるとすぐさま廊下へ走り出した。
「ミントさん」
「えっ、なんですの?」
「またいつでも来てください。ここなら誰もいませんから。」
クロミエはいつものニコニコ顔でそういった。
「・・・」
ミントはしばらく困惑した様子だったが、
すぐはっとなって、踵を返し格納庫へと向かった。
次の日、昼になりティーラウンジも人で賑わってきた頃、
ミントはまたクジラルームへと向かっていた。
 やはりあそこはいい骨休めになるし、
それに昨日のクロミエの言葉も気になっていた。
「えっと、クロミエさんは・・」
 ミントはクジラルームに入るなりあたりを見回した。
 ホログラムなのだからあたりまえだが、とてもよい天気だった。
 空気もおいしく、生きていると実感がわく。
 そして脚立に乗って木の手入れをしているクロミエを確認した。
「クロミエさん」
「あぁ、ミントさん、こんにち、わ!ぁっとと!」
「クッ、クロミエさん!」
 ガシャーン
 なんとクロミエは振り向きざまにバランスを崩して脚立ごと倒れてしまった。
脚立はかなり高く、怪我もただではすまなそうだ。
「いたたたたた・・・」
 脚立はかなり高く、怪我もただではすまなそうだ。
「だっ、大丈夫ですの!?すぐ医務室へ参りましょう、
さ、肩につかまってくださいませ!」
「はぁ・・すいませんミントさん、っつつつ」
 
「うーん、骨は大丈夫みたいだし、ただの打撲ね。
ただ頭を強く打ってるみたいだからしばらく安静にしてなきゃ駄目よ。」
「はい、ありがとうございますケーラ先生」
 クロミエはベットに座って、いつものニコニコ顔で答えた。
「うみゅー」
 いつもクロミエの肩に乗っている子宇宙クジラが心配そうにしていた。
ただでさえ大きな目をさらに大きくして、大粒の涙を流している。
「大丈夫だよ子宇宙クジラ、大したことないから。」
 そういって子宇宙クジラの額にそっと口づけた。
「まったく脚立で転ぶなんて、
そういう高い脚立はきちんと固定しておかなきゃ駄目でしょう。
まあいいわ、ちょっと倉庫から包帯取ってくるから、
ミント、クロミエのこと見ててあげてちょうだい。」
「あっ、はい、わかりましたわ」
 ミントはケーラが部屋から出て行くのを確認すると、
クロミエの方へ向き直った。
その顔には、いくらか暗い面持ちがあった。
「すいませんクロミエさん、私がいきなり声なんてかけなければ」
「そんな、ミントさんのせいじゃありませんよ。
僕がうっかりしていたからです。気になさらないでください。」
「・・・はい」
 クロミエからはミントへ対する憎悪などはまったく感じられかった。
クロミエの今の発言以外は何も聞こえなかった。そう、
なぜかクロミエにはテレパシーが効かないようなのだ。
本当に裏表のない人なのか、
しかしそんな人間はいるはずがないというのが、ミントの信条だった。
「ありがとうございますわ・・」
 ただクジラルームの管理人なのだから、
理由は何であれ心が見えないことに越したことはないとミントは考えていた。
きっと見えていたのなら、クジラルームの魅力も半減してしまうだろう。
「はい塗り薬と包帯。自分でできるわよね。」
「はい、ありがとうございます、先生」
「それじゃミント、クロミエを管理人室まで送っていってあげて」
「はい、承知しましたわ、クロミエさん参りましょう」
「それほど大したことなくて良かったですわね」
「はい、今日はありがとうございます。二度と送っていただいて」
「いいえ、私にも責任があるんですから、これぐらいさせてくださいまし」
 しばらく歩いていると、向かいの通路から蘭花がとおりかかって来た。
「あれ、ミントに・・クロミエ?」
「こんにちは、蘭花さん」
 クロミエはいつもの調子で返事をした。
「なにやってんの二人で、ってははーん、ミントー、
あんた最近ちょくちょくクジラルームに行ってると思ったら、
そういうだったんだー」
「ちっ、違いますわよ!。ただ、
クロミエさんが脚立から落ちたので医務室まで送りに行っていただけですわ」
 いまの蘭花の言葉が何を意味しているかは、
たとえテレパスでなくとも分かるだろうが。
そういうことに疎いクロミエにはなんのことかさっぱりで、
のほほんとしているだけだった。
「ほら、クロミエさん!行きますわよ」
 ミントはとにかくこの場をはなれたい一心でクロミエの手を引いた。
「えっ、あっはい・・っていたたた、痛いですよミントさん」
「あははは!、なによテレなくてもいいじゃない、あんた達おにあいよー」
「なんだったんでしょうね?蘭花さん。」
 クロミエはいまだ、さっきのことが理解できないでいた。
「知りませんわ・・ハァ・何か悪いものでも食べたんでしょう・・ハァ」
 ミントは急に走ったためすっかり息が上がってしまっていた。
「大丈夫ですか?ミントさん」
「はい・・ハァ・・・もう大丈夫ですわ」
 深呼吸して息を整え、いつもの落ち着きを取り戻した。
「それでは、このへんで失礼しますわ、また」
「あっ、ちょっと待ってください」
 クロミエに呼び止められ、思わずバランスを崩しそうになった。
「えっ、なんですの?」
「せっかくですから、お茶でも飲んでいきませんか?」
「・・・そうですわね、それじゃあ」
 断る理由もなかったので、行為を素直に受けることにした
「どうですか?クジラルーム特製なんですよ、そのハーブティ」
「えぇ、すごくいい香りですし、おいしいですわ」
 実際ハーブティは良質だった。
ティーラウンジにある最高級のものにも引けをとらない味だった。
 しかし彼女にはそんなことよりもっと気にかかっていることがあった。
昨日のクロミエの言葉だ。
突然のハプニングで聞きそびれていたが、
ちょうどいまが聞き時だろうと思った。
「昨日のあれは、どういうことですの?」
 ミントは変わらぬ調子でそうたずねた。
「あれって何のことですか?」
「クロミエさんが、私のことを心配だと」
 クロミエは、「あぁ」と思い出したようにつぶやいた。
「あれは、どういうことですの?」
「どういうことって・・・
疲れている人を心配するのがそんなに不思議なことですか?」
「っ・・・」
 ミントはなんだか心の中を見透かされたような気分だった。
確かにテレパシーゆえの周囲の雑音でストレスがたまっていたが、
決して表には出さないようにしていたはずだ。
「別に疲れてなんてございませんわ、ご心配なさらずに」
 そういって、またもとどおり笑顔でハーブティーに手を伸ばした。
それを見てクロミエは少し不満な表情を浮かべた。
「うそです、よかったら僕が相談に乗ります、なんでも話してみてください」
「ありがとうございます、・・でも本当に何でもありませんから」
 変わらぬ調子でハーブティーを飲んでいる、
ミントに対し、クロミエは苛立すら覚えてきた。
「あなたの、力になりたいんです」
「ですから、何もないと」
「僕ではだめでしょうか?」
「ですから!何もないと言っているではないですか!!
どうしてそんなに私に干渉してくるんですの!」
 ミントは、勢いあまってつい怒鳴ってしまった。
すぐにはっとなり、それと同時に自分がこんなに感情的になることに驚いた。
「・・すいません、おせっかいだったでしょうか」
クロミエは、
おそらくこの艦で誰にも見せた事のない悲しい顔を浮かべてそう言った。
肩に乗っている子宇宙クジラもなみだ目だ。
「あっ、いえ、、私こそ、つい感情的になってしまい、
尾見苦しいところを。申し訳・・」
「愛しているんです」
「えっ」
 ミントはいきなりの出来事に動転して、
状況を正確に判断できなかったが、
すぐにそれが自分に向けて放たれた言葉だと理解し、赤面した。
「だから心配なんです、あなたが」
「かっ、からかわないでくださいまし!」
「からかってなんていません、
疑うのなら僕の心を読んで下さってもかまわないです」
 クロミエの目を見ることができなかった。
それに対しクロミエの瞳はしっかりとミントの法へ向けられていた。
「わっ、私は・・・しっ、失礼します!」
「あ、ミントさん!」
 ミントは一言そういうと、勢いよく管理人室を出て行った。
三日後の昼下がり。
今日もクジラルームの天気は変わらずさんさんとしていた。
「大丈夫、皆さんタクトさんのことを信用されていますよ」
「そうか、ありがとうクロミエ」
 エルシオールの司令官、
タクト・マイヤーズはクロミエに相談に来ていた、
司令官である彼にとって、愚痴をこぼせるような相手は少なく、
若いながらも、寛大なクロミエはよき相談相手だった。
先ほども「レスターとフォルテにこってりしぼられたー」
などとぼやいていたところだった。
「それじゃ、俺はそろそろブリッジに・・」
「あっ、タクトさん」
「んっ?」
 急に呼び止められて、タクトはマントを翻した。
いつも笑顔のクロミエが、なんだか思いつめたような顔をしていたので、
何事だろうと思った。
「なんだい?クロミエ」
「あ、いえ・・・ミントさんは、最近どうですか?」
あのことがあってからミントはクジラルームに顔を出さなくなっていた。
クロミエはクジラルームが彼女の憩いの場であることをよく知っていたので
ストレスがたまっていないかと気がかりだった。
もちろん別に理由もあるわけだが。
「あぁミントかい?そうだなぁ、俺はいつもと変わらないと思うけどな。
あ、でもたまにうわの空だったりするときもあるな」
「そうですか・・・」
「なにか悩みでもあるのかもな、
でも聞いても『なんでもございませんわ♪』
の一本張りだからなぁ。クロミエはなにか知ってる?」
「えっ!えと・・僕はなにも・・・」
「どうしたんだよクロミエ?今日はなんか変だよ」
「いえ・・・なんでもありません」
 クロミエはタクトから目をそらした。
「なんだよー、ミントもクロミエも、俺ってそんなに頼りないかな?」
「いっいえ、そんなことは」
「ミントのことかい?」
 図星を言われてクロミエは少し言いづまった。
「・・・・・はい」
「そっか・・・話してくれてうれしいよクロミエ
それでどうしたんだい」
 クロミエは言おうか言うまいか迷ったが、
ここまできてしまったのだから思い切って
言うことにした。
「思いを・・伝えたんです、愛していると」
「いきなりかい?それはまぁ、クロミエらしいというかなんというか・・・」
 タクトは少し困ったように顔を赤らめて返答した。
「でも、拒絶されてしまいました、振られてしまいましたね・・・」
「そうか、・・でもそれは多分違うよクロミエ」
「?、なにがですか?ミントさんは行ってしまわれたんです、
何もいわずに」
「でも嫌だなんて言っていなかっただろ」
「それは・・」
「きっと突然の出来事に気持ちの整理ができなかっただけだよ。
今だってきっとどうクロミエに会えばいいのか悩んでるさ」
「・・・そうでしょうか?」
「あぁ!きっとそうだよ。
だからクロミエの方から会いに行ってあげなきゃ
こういう時は男が動くものだよ」
「タクトさん・・・」
「おっと、やばいやばい、早くブリッジに戻らないと、
またレスターに怒られちゃうよ。
じゃあねクロミエ、必ずミントに会いに行くんだよ!」
そういうとタクトは踵を返して急ぎ足で司令官室へ向かった。
「はっ、はい、ありがとうございました、タクトさん」
時間は夜の12時すぎ、艦内のクルー達も今日の疲れを癒し、
来たるべく明日に備え床に入っている時間だ。
 何時もならクロミエもとっくに眠っているころだが、
さっきのタクトの言葉をずっと考えて、眠れないでいた。
「星がきれいだね、子宇宙クジラ」
「うみゅー♪」
 クロミエはいつものように肩にのっている子宇宙クジラにそう言い
子宇宙クジラの方も笑顔でそれに答えた。
 クジラルームの中は、この時間帯になるとホログラムを解除し、実際の外の
景色が映し出される。夜空に瞬く星星は今日も信じられないど美しく、
なかでもこのクジラルームは海が一面に海が広がっていることもあって
展望公園などよりも、よく星が映えた。
「明日ミントさんに会いに行こうと思うんだ」
 クロミエは星を見上げたまま、子宇宙クジラにつぶやいた。
ミントが自分の能力、テレパシーのせいで頭を抱えているのはクロミエも
気がついていた。
最初の内はただそれを気の毒にしか思っていなかった。
 だが次第にその気持ちは愛情へ変わっていった。
しかし今彼女の抱えている問題ばかりは、自分にもどうしょうもならない。
 だから彼女に知ってほしかったのだ。自分を愛している人間がいることを。
「そして、もう一度ちゃんと思いを伝えようと思う」
『それは、すごくいい考えだよクロミエ』
 不意にクロミエの頭にその言葉が響いた。
「?・・宇宙クジラ?」
『彼女は今悩んでいる、本当に信用できる人を求めているんだ。
きっとその行動はいい結果をもたらしてくれるよ。君にも、もちろん彼女にも。』
「・・・ありがとう・・宇宙クジラ」
 クロミエは満天の微笑みでそう言った。
そして宇宙クジラも水しぶきを勢いよく背中から放射してそれに答えた。
その光景はこれ以上ないほど美しく、クロミエの心を沸きたてた。
「少しのどが渇いたな、ホールの自販機でお茶でも買おう」
 クロミエは明日に備えもう寝ることにしたが、体がそうはいかなかった。
潤いを求め、深夜のエルシオールの廊下をさまよい歩いていた。
「うーん、ホールってどこだったかなぁー。
あまりクジラルームから出たことないから分からないや」
 クロミエは後頭部を掻きながらそうぼやいた。
昼間なら人に聞けるが今は深夜の1時前、
誰もおきている者はいないだろう。
 子宇宙クジラも寝てしまったので、何だか心細くなってきた。
「弱ったなぁー。・・あれっ?今人影が?」
 人影かどうかは分からなかったが、確かに何か動いていた。
助かった、クロミエはそう思った。誰かは知らないがこれで道が聞ける。
「あの、すいませんホールは、、、?」
 廊下の角を曲がりすかさずクロミエはそれを呼び止めた。
その瞬間クロミエは目を見張った。
人だと思って呼び止めたそれは、人の形をしておらず、なにか真ん丸い物体、
さながら大福もちでも思わせる形状をしていた。
しかしもっと驚いたことにその中に入っていたのは・・
「ミ、ミントさん・・?」
「クロミエさん・・・・」
二人は目を合わせたまま呆然と立っていた。
深夜に着ぐるみを着たミントと廊下で突然出くわす、
この不可解な状況にただそうするしかなかった。
「きっ・・・奇遇ですわね、こんなところで会うなんて、おほほほ」
「はぁ・・・ほんと奇遇ですね・・・」
 またもや長い沈黙が始まった。
しばらくしてクロミエははっとなって我に帰った。
とりあえず着ぐるみについてはあえて問わないことにした。
今はそれよりももっと大切なことがある。
「そっ、それじゃあ、私はこれで・・」
「あ!待ってください!」
「なっ・・なんですの?」
「クジラルームへ行きませんか?星がすごくきれいですよ」
 クロミエは持ち前の平静さをとりもどしそう言った。
「・・・せっかくですけど遠慮させていただきますわ。もう遅いですし、
クロミエさんも早く、きゃっ」
 ミントがしゃべっている途中、クロミエはミントの手をとって引っ張った。
「そう言わずに、クジラルームで見る星空は格別ですよ♪」
「ちょっ、ちょっとクロミエさん!ひっぱらないで下さいまし!
分かりましたから、着替えだけでもさせてください!」
「いいじゃないですかそのままで、誰も気にしませんから」
「そういう問題ではなくて、ちょっとクロミエさん!?聞いてますの!?」
「まったく・・・強引な方ですわね」
 ミントはクロミエのいつにない行動に、驚きつつも少々あきれ顔だった。
「ほら、こっちです、浜辺で見ると星もよく映えるんです。
見てください。すごくきれいですよ」
「もう、人の話を・・・」
 ミントは無数に瞬く星星を見上げ、
その美しさに心奪われ思わずクロミエへの文句を止めた。
 ホログラムを解除したクジラルームは初めてだったので
いつもと違う光景に新鮮な気持ちだった。
「本当に・・きれいですわね」
「その着ぐるみも、とても素敵ですよ」
 クロミエは本気なのか、冗談なのか分からないような調子で言った。
そのこと言葉に、ミントは少し不機嫌な表情を浮かべた。
「・・クロミエさん、あまり年上をからかうものではありませんわよ」
「年上といっても1つ違いじゃないですか。
それにからかってなんていませんよ、とてもよくお似合いです」
 クロミエの返事に少々ミントは困惑した、
本当に彼からは嫌味な感情など微塵も感じられなかったからだ。
「・・・本当に何を考えているのか、分からない方ですのね」
 ミントはため息まじりにそう言った。
「・・?テレパシーで僕の思考を読み取れないんですか?」
「それができれば、苦労はしませんわ」
「?」
 クロミエは今の言葉が何を意味しているのかよく分からない
ような顔をして、答えを求めるかのようにミントを見つめた。
「・・私、あなたの心だけはなぜか読めませんの」
「えっ?そうなんですか?」
 クロミエは以外な事実に少々驚き顔だった。
「でも、何ででしょうね。僕だけだなんて」
「さあ、わかりませんわ・・・」
 ミントは心なしか少し元気のない調子で答えた。
「でも、そんなことはどうだって構いませんわ。
今はこの星空を楽しみますわ」
「そうですか・・よかったです気に入って頂けて」
 二人は浜辺に座って、満天の星空を見上げた。
「ミントさん、この前は突然あんなことを言ってすいません」
 クロミエはもう一度きちんと話をしようと切り出した。
ミントの方もやはりきたかと、少し緊張気味になった。
「でも、この気持ちは本当です」
 クロミエはゆっくりとそう言い、ミントの返事を待った。
「私、クジラルームに逃げてたんですの」
「・・・」
「すいません、クロミエさん、失礼でしたわよね」
「いいえ、かまいませんよ。
それに、分かっていましたから」
 クロミエは、穏やかにそういった。
ミントが正直に話してくれたことがうれしかったのだ。
「ずっと、この能力を疎ましく思ってましたわ」
「・・・」
「物心ついた時から。
家には沢山の人がいましたから、
それだけいろんな思想が飛び交ってましたわ。
そして私を慕ってくれる方の大半が、父に取り入ってもらおうと
お考えしたわ。誰も、私なんて見ていませんでした」
ミントはふぅっと憂鬱そうにため息をついて話を続けた
「舞踏会なんてひどいものでしたわ。うわべだけの付き合い、
お世辞や、建前だけの会話。その裏には憎悪の念もみうけられたり
もしましたわ。
それから、なんだか誰も信じられなくなったんですの。」
 ミントはとうとう泣き出してしまいそうな顔になって、
俯いた。
「ミントさん・・・・・。
ミントさん、人はそんなに強いものではありません。
一時の感情に振り回されて、自分を見失ったりもしてしまうでしょう。
でも、本質的なところでは、汚い人間なんてきっといませんよ」
「・・わかって、いますわ・・。わかっているつもりですわ。
でも、駄目なんですの。信じたいと、どんなに思ってもその人の裏の顔
が見えてしまうんです!怖いんですの、人を信じるのが!」
 ミントは今までためていたものを一気に放出せんばかりに
まくし立てた。そしてその目からは、一筋の涙が流れていた。
「ミントさん・・・」
「クロミエさん、あなたに愛しているといわれてから、
ずっと考えていましたわ。信じたいと、私を愛してくれていると。
でも、それも駄目なんですの!心が読めないから、あなたの・・」
 ミントは力なくそう言い、続けた
「心が読めるから、信じられない。でも・・読めなければ不安になる。
私は・・誰も・・」
「ミントさん」
 ミントが言い終わる前に
クロミエは身を乗り出してそっとミントを抱きしめた。
「!?、クロミエさん?」
 ミントは突然の出来事に、気が動転した。
「ミントさん・・聞こえますか?僕の心臓の音が」
ミントと急接近したためか、クロミエの心臓の鼓動はこれ以上ないくらいの
大きさで激しいビートを刻んでいた。
「これが、僕の気持ちです」
「クロミエさん・・・」
 波の音も、風の音も聞こえなくなった。
聞こえるのはただ一つ、クロミエの心臓の鼓動だけ。
それはどんなに美しい音楽よりもやさしく、そして暖かかったに違いない。
人に抱きしめられるなんて何年ぶりだろうか。
彼の暖かな気持ちが心臓の音を通して伝わってくるようだった。
「・・・」
 ミントはゆっくりとクロミエをから離れ、
そして着ぐるみのファスナーをおろした。
「!え、み、ミントさん!?」
 着ぐるみを脱いだそこには、下着姿のミントがいた。
てっきり普通に服の上から着ているものだとばかり考えて
いたクロミエは予想外の出来事に気が動転した。
そんなクロミエなどお構いなしにミントはすっとクロミエに抱きついた。
「ちょっ!、ちょっとミントさん!?」
「暖かいですわ・・・」
「えっ?・・」
 ミントは静かにそういった。着ぐるみの上からでは分からなかった
クロミエの体温が、しっかりと伝わってきた。
「抱きしめてくださいまし、クロミエさん」
 ミントは、もっとクロミエのぬくもりを感じようと、さらに力を込めた。
「・・・はい」
 クロミエもそれに答えるかのようにそっと腕を回した。
そして、しばらくお互いを見つめあいそっと唇を重ねた。
長い接吻だった、二人にとってはまるで永遠にも永く感じられた
その間にも二人に心臓の鼓動はさらに激しいビートを刻んでいた。
「・・クロミエさん、お願いがありますの」
「なんですか?」
「私を、・・・抱いてくださいまし・・・」
「?、今抱きしめています」
「もう、・・そうではございませんわ」
 ミントは今の自分の言葉に赤面しながらも、
クロミエの鈍感さに少々あきれた。
「もっと・・・クロミエさんを感じたいんですの・・・」
 クロミエは一体何のことやらと、少しだけ考えたが、
すぐにミントに言わんとしていることが分かると、彼女同様
赤面してしどろもどろになった。
「えっ、でっでも、ミントさん!?」
「お願いしますわ・・」
 ミントは恥ずかしさのあまりか、消え入りそうな声で言った。
「・・・いいんですか?」
「はい・・・」
「分かり・・ました」
 そういうとクロミエはミントのブラのホックに手をかけ、静かにそれをはずした。
ミントの、決して豊満ではないが形のいい乳房が外気にさらされた。
クロミエはミントを砂浜へゆっくりと押し倒し、その乳房へ顔をうずめた。
「はっ、ん・・・、」
 ミントは切なそうにそう漏らした。
そしてクロミエは、少し後ろへ下がり、ミントの水玉の下着に手をかけた。
「あっ、!まってください、自分で脱ぎますわ・・」
「すっ!すいません、なんだかあせってしまって・・・」
 ミントはそういって自分の腰に手を当てたが、
クロミエがいまだ服を着たままというのがどうにも腑に落ちなかった。
「クロミエさんも、脱いでくださいまし・・」
「あっ、すいません、気がつかなくて」
 クロミエは自分の上着に手をかけ
下着ごと脱ぎ捨てた。
15歳の少年相応の体つきだった。


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