ヴァニラな話

割り箸を割る。
牛丼の湯気が顔にかかる。
箸でご飯を掴み、それを口に運ぶ。味噌汁をすする。
味噌汁の中にはヴァニラがいる。豆腐やワカメやネギに隠れて。
ヴァニラからだしが出る。良いだしだ。
牛丼をまたかき込む。ちらっと時計をみる。7時50分。
もっとのんびりしていたいが、あまり時間がない。
8時には電車が来てしまう。「さあ、さっさと乗れよ」と言わんばかりに、
人を飲み込む扉が開いてしまう。
味噌汁をすする。とても良い味だ。
箸でヴァニラをつまみ、口に運ぼうとした。でも途中ですべって味噌汁の中に落としてしまった。
僕は指先が不器用だ。箸を使うのがあまり得意ではない。それに、ヴァニラはよくすべる。
今度は慎重にヴァニラをつまんだ。そのまま口に入れる。
コリコリという食感が口の中に響いた。
真新しい打楽器を叩いたような、そんな音がした。
僕は残りの牛丼を食べ、店を出た。
そして駅へ向かう。せっかちな電車が待つ慌ただしい駅へ。
胃袋の中で声がした。「がんばって」。
これはきっとヴァニラの声だ。

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