レスターな話

 毎日毎日毎日。頭の中は彼のことばかり。考えたくないのに、不意に自分の中にそっと忍びこんでくる彼の影。
 碁のことだけを考えていた日々は、遥か遠い昔のことだ。もはやその頃の自分がなにを考えなにを意識していたのかすら記憶にはない。
 彼との出逢いが、自分の常識を根底からひっくり返してしまった。
 めざわりで、鬱陶しくて、そして…
 そして…

もうダメだ、と思った。限界を悟ってしまったから、もう道は残っていないのだと思った。
このままでは自分は壊れてしまう。彼を壊さない限り、どこへも行けない。
壊す。
壊す。
壊す。
…そう、壊してしまえばいい。
すべてを。
それは、なんて甘美な誘惑だったろう。

すっ、と目の前を横切って行った姿に、レスターは足を止めた。
今まで無視をされたことのない人生だった。生、と言ってしまえるほど長い時を生きてきたわけではないけれど、
彼には常にスポットライトが当たっていた。優秀で美しく、どことなく影もある彼には男も女も惹かれていた。
そこへ、突然現れたタクト・マイヤーズという名の少年。同年代には負け知らずだったレスターに、一粒の黒い染みを落としていった彼。
レスターの心をめちゃくちゃにかきまわしておきながら、それがなんでもないことのように無邪気に笑っている彼を、
無視することなどできるはずもなかった。
それでも、彼を意識していると気取られるのは屈辱で、あえて眼中になどないという素振りを続けた。つらかったけど、続けた。
段々と自分の中に蓄積されてゆく得体の知れない感情があることに気付いてはいたが、それからも眼をそらした。
でも、それも限界。
自分の感情と向き合わなければ、レスターはもう何処へも行くことができなくなってしまった。道は閉ざされ、出口が見つからない。

計画は綿密に。どこにも綻びをつくらないように、彼を手中におさめる準備をする。
捕らえて、閉じこめて、逃がさないように。

「タクト?」
静かに、けれど強い意志をこめて、名前を呼ぶ。振り返った彼の驚いた顔。
始まりの合図が、頭の中でこだました。



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