フォルテとメアリーと

メアリーは買い出しに来ていた。
かるくなった手をかるく伸ばし、ちょうど良い日差しの降るこの清々しい日に感謝する。

先程八百屋のおじさんに容貌を誉めてもらい、いくらばかりか嬉しいことにまけてもらった。
しかも女手で運ぶのは大変だろうと、基地まで運んでくれるとまで申し出てくれた。
少し多めに買ったのもあるだろうけれど。
今日は仕事もないし、色々見て回りたい所もあったので、メアリーは甘えることにした。
(平和ね…)
手ぶらで歩きながらのすれ違い間際、ココモとマリブに似た背丈の少年が走っていく。
自然と笑みがこぼれた。
軍の存在さえ知らなければ、こうして街を走って、歳の近い子たちと遊びの約束をしたり
ごく普通の生活を楽しんだのだろう。
あの子たちは実際に幼い子どもだ。
でも、日を増す事に軍の功績を上げていく2人へ期待を寄せているのも事実である。
やはり必要な存在に、ご褒美でも、確か通りにはクレープが売っていたはずだ。
と……不意にココモとマリブの事が頭から消えた。
「……なにを、しているの?」
それは見覚えがあるとかじゃ済まされないぐらい何度も目にした影。
僅かな家々の隙間で狭苦しそうにしながら呼びかけられて思いきり驚いた姿は本人そのもの。
最早メアリーの頭にココモとマリブのことなんて、一つも頭に入る余地もない。
「…い、いや。あ……あは…あはは」
そこにいたのは、メアリーを不幸か幸か見つけてしまったフォルテだ。

矢先、フォルテに何故だか隠れねばならないと胸の内が緊張の糸を張り巡らせて騒ぐ。
ぐっと身体が強ばってしまう。自分じゃなくなってしまったような強い喪失感がそうさせた。
そして、言いようのないような、もどかしい想いが立ち込める。原因は知れているのだが。
「こんにちは、中尉さん」
それがフォルテには妙に色っぽい声だったように思えて、不安にかぶりを振って返す。
「こんちはー…少佐」
メアリーはあの2人の面倒をみている感覚と重なることに頭を悩ませた。
「……あなた何してるの?」
「…巡回」
素っ気のない応えに嘘だとは思わなかったが少し失礼ながら笑いが込み上げてしまう。
昼間からフォルテが仕事と言えど居住区に来ていることに珍しさを感じたからだ。
「で、いいのかしら? 中尉さんがこんなところで遊んでいても」
「あんまり良くない」
「それとも…なぁに、私と会いたかったって?」
「べつに、そんな……たまたま居ただけで…メアリーが来て……」
何かを否定したいみたいに必死でうつむきがちに呻くフォルテは、つくづく頬を赤らめていた。
(うわぁ…)
今度はメアリーが頬を赤くする番だった。
普段との一線を越えた、外見に少々キツい印象を保たせるフォルテだからこそ、
こんな縮こまった仕草が愛らしく見えるのかもしれない。
その境界線は、メアリーの裏の人格を呼び起こすことになる。
「あら、どこ行くの?」
不満げでなおも名残惜しそうに後じさるフォルテに声をかけると、不満げに眉を潜められ、
「お仕事」
と言う。
でも苦しげに逃避を求めている、いい玩具の格好であるフォルテを逃すつもりはない。
「つれないわね。一緒に行ってもいいかしら?」
フォルテがびくん、と言葉を受けてから身体を震わせたように見えたのは気のせいだろうか。
少しの沈黙が流れ、やがて、勝手にしなよ、と背中越しに無愛想な返事を返された。
メアリーは勝手にさせてもらうわ、と照れ性なのを隠そうとそっぽ向くが、
いまいち上手にやりきれていなくて器用さに欠ける彼女に微笑んだ。



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