強く念じれば思いが叶う、ということがある。
例えばジャンケンなどで「負けるのではないか」と弱気になると、本当に負けてしまう。
また「絶対勝つ」という強い信念を持てば、ジャンケン程度の勝負では勝つことができる。
もちろん、うまく行かない事もある。ただその場合「絶対勝つ」という強気の裏に、
「謙虚なほうが得をするのではないか」という迷いが隠されている。
こうなると、神に見捨てられてしまう。
純粋に念じる者のみ、神は微笑んでくれるのだ。
今、私の前に一人の少女がいる。「会いたい」と強く想い続けた人だ。
草原のような緑色の髪が心を和ませる。
鮮血の目薬を垂らしたような真紅の瞳は、妙に惹きつけられる磁力を感じる。
バニラアイスを彷彿とさせる白い肌は、どこか弱々しい。
放っておくと溶けてしまいそうだ。
彼女の名前はヴァニラ。
ずっと会いたかった。本当に会いたかった。
私は湧き上がる感情を抑えることができず、彼女に抱きついた。
この世の中は誰が創り出したものなのだろう。ふとそんな考えが脳裏をかすめる。
神であろうか。
いや、私はそうは思わない。神というのは人間の想像の産物、
というよりは想像力の限界を埋める為のスケープゴートだという気がする。
人間の揣摩が届かぬ部分を埋めるため、神という抽象的な存在を確立させたのだ。
私は、この世を創ったのは私自身なのではないか、と考える。
私にとってこの世の終わりは、私がこの世から存在を消す事である。
逆に言えば、意識がここに実在するからこそ、私はここの住民でいられる。
それは私が何かを感じ、それを認識することで、私を含むこの世の森羅万象がそこにあることになるのだ。
その認識を変えてやれば、世界が変わるということになる。
あらゆるものが、万人の目に同じように映るわけではない。それは当たり前の事だ。
夕日は赤い、殆どの人間がそう捉えるであろう。
しかし色覚異常を患う者はどうか。灰色に見えるかもしれないし、黒に見えるかもしれない。
「あれは月である」という認識すらしかねない。
盲目の者にいたっては、「太陽が存在している」事すら認知できぬかもしれない。
だがこれらは、本人にとっては総て真実である。
器官というスクリーンに描き出される個々の世界は、他人には編集できないものなのだ。
要するに、私が有ると思うものは有るのだ。それがたとえ第三者に見えぬものだとしても、
私の中にそれは存在する。
私の腕に抱かれ骨をキシキシ鳴らすこの少女も、確かにここに存在するのだ。
「痛い…です…」
少女が搾り出したか細い声は、小枝が折れる音に似ていた。
「離して…下さい」
私の脂ぎった顔が嫌なのか、少女は激しく抵抗した。
「うるさい! 俺は、お前の総てが欲しいのだ!」
完全に獣になっていた。しかしそんな事はどうでもいい。
どうせこの子は、私の思念が形象化したものだ。私の思うがままなのだ。
まず手始めに、少女の衣服を剥ぎ取る。白い肌が街灯に照らされる。
「いや! やめて…」
隠す物がなくなった胸元を必死に手で覆うが、私はそれを振り払う。
ピンク色の乳首。おそらく快楽の器具として使用した事はないのだろう。その鮮度は、新品同様といった感じであった。
まずは摘んでみる。脳が麻痺していて、力加減がうまくできない。あやうく潰してしまうほど、強い力でつねってしまった。
「痛いぃ!」
彼女の口から悲鳴が漏れる。
泣きじゃくる表情を見た私は、さすがに心苦しくなった。
だがこの良心の呵責というやつも、私自身が作り出したものだ。
こんなもの、振り払ってしまえばいい。そうすれば何も怖いものはないのだから。
私は良心の責め苦を捻り潰した。もう罪の意識は微塵もない。
心は平穏で、清々しい気分になった。冷水のシャワーを全身に浴びた、あの感じに似ている。もう何も怖くない。
私は少女の乳首に貪りついた。
膨らみかけた乳房は柔らかく、プリンの様だ。崩れないように、やさしく舐め回す。
下の方には指を入れた。こちらは納豆を掻き混ぜるように、激しくいじくり回した。
何か膜のようなものに触れたが、関係ない。そのまま突き進んだ。
血が噴き出し、爪や指の間に流れ込む。
私はそれを口元に持っていき、ぺろりと舐めた。
ここで私は、股間がやけに痛い事に気づいた。よく見ると、パンパンに膨れ上がっている。
チャックを開け、肉棒を取り出す。先が少し湿っている。
「ヴァニラちゃん、これをしゃぶっておくれ」
少女は余計な抵抗などせず、素直にそれを咥えた。
口いっぱいに、私の肉棒を含むヴァニラ。舌を器用に這いまわしながら、前後にピストン運動を繰り返す。
少女の口には大きすぎたのか。口の端が裂け、血が滴る。
「ああ、ヴァニラちゃんの舌、気持ちいいよ…」
私は絶頂に達し、欲望を白濁した液に変え、総てを放出した。
むせ返る少女を見下ろしていると、何とも言えない優越感に満たされた。
「おい、そこで何をやっている!」
二人組みの警察官が血相を変え、私の方へ走り寄ってくる。
あれ、私は何をやっていたのだろう。数分前の記憶が飛ぶ。
(そうだ、ヴァニラちゃんにフェラチオをしてもらって…)
しかし周りを見ると、セーラー服を着た半裸の女性がすすり泣いているだけだ。
「貴様、こんな路上でなんて事を!」
背の高い方の警官に、胸倉を掴まれた。
「君、大丈夫かい」
華奢な方の警官が、女性に自分のブレザーを掛けてやった。
手錠を掛けられ連行されている途中で、私は今までの事が妄想であることに気づいた。
ヴァニラだと思って犯していたのは、ただの女子高生だったのだ。
まあ、それでも良い。私がヴァニラだと思えば、それはヴァニラになる。
それにこの汗臭い警官に連行されるのも悪くない。
なんせ私のフィルター越しに見れば、この体格のいい警官も、フォルテ・シュトーレンに見えてくるのだから。
「……西高のY子って、見知らぬ男に犯されたんでしょ?」
あの事件の話は、瞬く間に広がっていった。
「そうらしいのよ。それもヴァニラちゃん、ヴァニラちゃんって口走る、オタク系の男にやられたんだって」
「え〜、悲惨ねぇ。でもその割にはあの子、元気そうじゃない」
「それがあの子もね、「タクトさんとやった」なんて言うのよ。それも嬉しそうに」
「へぇ、きっとショックでイカレちゃったんだわ。かわいそうね」
噂好きの二人の女子高生は、笑いながらコンビニの中に入って行った。